HEROS

2018.11.26
no.15
太田 和美
Kazumi Ota
美術家
ホヤとおっぱいで愛を叫ぶアーティスト

プロフィール


太田 和美

美術家ホヤとおっぱいで愛を叫ぶアーティスト

宮城県仙台市生まれ、石巻市在住。東京造形大学造形学部デザイン学科室内建築専攻2010年卒。在学中より、人や街の記憶と自分の記憶、女性、タブー×カワイイが混在する空間インスタレーションを展開。2012年より東日本大震災の被災地を取材。現在は、アートが人々の生活を後押しする、声を代弁するような存在になればと三陸海産物「ほや」と女性と豊穣の象徴である「おっぱい」をオマージュした『HOYAPAI』を展開中。

 


根っこが暗いわたしは変身をして大胆に行動する


-太田さんを今日お呼びしたのはなぜかというと、大胆な行動と表現する勇気が常識を逸してると感じまして。

よくわかんない。

ーすみません。地域や町という場所は、人間関係などで動きづらくなったりすると思うんです。そんな中で、たとえ全員にいい印象を抱かれなかったとしても、太田さんはずっと自分をさらけ出し続けている。なぜだろうと思いまして。

なんでかな。でも、弱い部分を隠してるかな。

-弱い部分を隠してる?

うん。人見知りだし、実は人と違うことをやろうっていう気持ちはそれほど思ってないし。そんなに目立ちたくない。

-小さい頃からですか?

いや、小さい時は逆だったかも。ウチの母親が性的なことに壁をすごく作る人だから、その反動かな。いや、そこまで毛嫌いしなくてもっていう。ホヤパイみたいにおっぱいを表に出してる作品を作るのは、母親の考えに対しての反論っていうか、喧嘩を売るっていうか。そういうのがベースにあって。だから、ホヤパイをかぶってる時は顔を隠すし。だから、みんなほとんど知らなかったりするじゃない、中身の顔。

-なるほど。

実際、恥ずかしくないかって言われると、初めての場所は恥ずかしいって思うし、反応も怖いし、どういう動きをしたらどういう反応するんだろっていうのがわかんない。そういう不安はもちろんあるんだけど、それを全部、表現で隠してるかな。

-目立ちたくないっていう部分を表現で隠してるって感じ?

社会とうまくつながって生きていくための表現。表現していないと隅っこで座って引きこもってるような人になっちゃうと思う。

-表現がないと社会と上手く接せられない。そう考えるとホヤパイは戦うための兜のように見えてきますね。

表現がなくなったら、私、すごい暗い子だと思う。根っこはすごく暗い。誰とも今日は会いたくないなって。

-根っこが暗い反動のようなものですか?

うーん。反動じゃないな。暗い自分でいたくないから。

-そういう自分はあんまり好きじゃないんですね。

うん。

-根っこが暗い自分で社会と接続するよりかは、表現をして、大胆な行動をしている自分として社会と接していく方がいい?

うん。表現をやりきった後はその分落ちるけどね、素の自分のところまで。ああ、今日は風呂入るのめんどくせえ、みたいな感じで。


抑えこまれた感情を解放する存在として


-それこそヒーローとして必殺技も聞こうとしたんですけど、武装、なんですかね。

そうだね。若い子はファッションで自分を着飾って、見せたい自分を作ってるじゃないですか。そういうのに近い感じ。

-メイクもモードチェンジみたいなところありますよね、しかも白塗りをされてますし、儀式のよう。

そうかもね。ああ、思い出した。小っちゃい頃、暗い自分もあったんだけど、人の迷惑を考えずにわちゃわちゃ遊んだりしてた時もあって。でも、小学校、中学校にあがると学ぶじゃん、いらない学びを。こういうシーンだとこういう風にしなきゃいけないんだとか。

-はいはいはいはい。

周りのことを気にしないで自分の思うように遊べていた頃の自分。年齢を重ねてくにつれて、社会の雰囲気、ルールっていうのに押し込められていった。自分の感情の解放を、上手く表現できる存在としてホヤパイがあるのかもしれない。

-さきほど、小さい頃は目立ちたくないっていう話がありましたが、それは空気を読み始めた以降?

そうそう、小学生からだと思う。幼稚園の時はすごかった。

-もっとこう、エッジが効いてました?

うん。この場面でおまえ踊らねえのかっていう。ほんとに気にしないみたいな。

-本来はめちゃくちゃ遊んでたし、人の目を一切気にしなかった。その抑えていった部分を武装をしていくことによって、開くという感じ?

うん。表現者じゃない人とは見え方が違うだけなのかもしれない、表現者じゃない人はファッションとか仕事で武装だったりとか、自分の出し方っていうのを必ずしてると思うの。やってることは違うけど、結局は同じようなことをしてる。

-蓋をバンって開けるのって、なかなか出来ないと思うんですよね

自分が大切にしてるコトや人たちが傷ついたり、穢されていったりするのは嫌かな。すごい爆発しちゃう。自分になにかある時はなんともないんだけど。

-なんで自分じゃないんでしょうね。

自分が大切にしてるものって自分のことも大切にしてくれてるからかな。

-私も傷つくって感じなんですか?

傷つきはしないな。怒るだけ。

-太田さんは怒りの女神みたいな感じがするんですよ。

それをできるだけコミカルにやってるのだろうね。

-できるだけ?怒りをコミカルに表現すること。

怒りをどこにもぶつけられないし、どこにもぶつけちゃいけないなって思ってるのかもしれない。喜びだったら、ねえ聞いて聞いてあのね、とか言えるけど。自分の怒っていることを関係ない人にぶちまけたり愚痴ったりするのは、あんまりないかも。


孤独だったわたしを救ってくれた舞踏の世界


-怒りのほかに辛いこと、悲しかったりもそうですか?

辛いとか悲しいとかも。もともと、ホヤパイのパフォーマンスのベースって舞踏なんだけど。舞踏って生と死を身体表現で見せたり、人が直視しづらい感情だったり、共有しづらいものを表していると思っていて。

-普段の生活ではなかなか共有できないもの。

人それぞれ、言えるものと言えないものが違うとは思うんだけど。私の場合、最初のきっかけは、自分の子供をおろして精神的にかなり落ちた時に、たまたま舞踏を見て。今にも死にそうなお爺ちゃんがおしろい塗って、筋肉をプルプルさせながら踊ってるわけ。なんだろうな、その時に私は感情的に救われたというか。なんで救われたかは、いまいちよくわかんないんだけど。

-舞踏という表現に救われた。

舞踏家さんの踊りを見て、初めて死を受け入れて。私は舞踏を踊ることで、踊る時だけ死と向き合えたというか。踊る以外のときはちゃんと生活できるぐらいの精神状態になるっていうか。

-踊ることによって、自分のマイナス部分と向き合う。それがあるからこそ表の部分が健全に保たれていく。

 

うん。さすがに友達に「いやさあ、子供おろしてさあ、マジ超キツイ」みたいに言いたくなかった。今だったら言えるんだけど。

-その当時は、ちょっと言いにくいっていうか、そういう思考にもならなかった?

ならないね。自分の子供をおろすっていうのを自分で決めたってことは、自分の子供を自分で殺すって決めたのかなとか、罪悪感がすごい半端なくて。

-孤独じゃないですか、誰にも相談できないって。

だから救われたのかな。

-舞踏はある意味、太田さんにとってのヒーローだったのかもしれない。今度は太田さんが体現しているように感じます。その系譜がちゃんとあるのかなって。

一番最初にコンタクトを取った舞踏家さんに言われた言葉があって。もう恥を捨てろみたいな。

-恥を捨てろ?

うん。自分の行き場のない感情を解放したいなら、踊りが上手い下手とかじゃなくて、そういうものを出し尽くすことが一番大切なんだみたいなことを言われた。踊るんじゃなくてって。

-恥を捨てるっていう部分は太田さんにとっては大きい?

デカいね。恥をかきたくなかったもん。私が通っていた美大ってさ、センスがある人が集まってるわけで。自分の表現をその中で貫いて出していくっていうのは結構しんどい作業だった。その根っこにあるのは、表現の仕方で負けたくないとか。で、舞踏家さんに恥を捨てろっていう言葉で全てが変わっていった感じかな。どんなに内容がまとまってなかろうが、自分の頭の中を皆に見せなきゃ意味がないって。

-ありがとうございます。響きまくっています。失敗が怖くなくなりました?

うん。普通に働いている人もそういう場面はあるのだろうけど、私がそう思えるようになったのは、たまたま舞踏だった。仕事じゃなくて。

-なるほど、表現の世界でそういう考えに至ったと。で、気付かせてくれた表現の世界で、自分自身をさらけ出し続けてる。


昔の白黒映画から学んだ風刺的表現


話は全然つながらないんだけど、私、大学の頃にチャップリンの喜劇をよく見てたな。ドジなことをしても、見てるお客さんは笑ってるわけじゃん。だから思い出すのかな、チャップリンの喜劇。

-悲劇もロングショットで見れば喜劇、ですよね。

目指してるのかな。周りの反応とか声を聞いてると思うよね。ああ、チャップリン的な立場かな今って。

-たしかに太田さんってピエロっぽいですよね。白塗りして、派手なファッションをして、みんなを集めてちょっと別世界に連れていくみたいな。

私の表現の組み立て方としてはそこがベースかも。昔の白黒映画って風刺性が強いのが多かったし。

-彼らはコミカルにやりながら、その時の絶対的な権力を持つ人たちを馬鹿にして、それを市民がクスッと笑う。あ、言ってくれてるみたいな。必殺技、風刺にします?

風刺ね。でも風刺だろうな。

-チャップリンもそうだし、やっぱり怒りの爆発とか共有しづらいものをちょっとコミカルに表現するとかも、やっぱり風刺につながってくるのかもしれないですね。

話してる中で浮かんできたってことはそうなんだろうね。

-これでやっと必殺技も決まったので。

風刺。


傷つけたくはないんだけど、いい子ちゃんではいたくない


-ちなみに自分という存在を一言で言うとなんだと思いますか?

何だろうな。今の時代に合わせて言うとメディアとか。

-メディア的存在?

そうそうそうそう。メディア。

-自分がメディア的存在であり、風刺っていう必殺技があった場合に、今後どういうレベルアップをしていきたいですか?

誰も傷つけないように気をつけたい。すごく。

-すごく。なぜですか。

あるプロジェクトを始めた時に、連絡がうまくできなかったりして、怒ってしまった人がいて。ホント申し訳なくて。これからレベルアップをするなら気をつけたい。どうしても感情的に動き始めるから止まらないんですかね。振り返らないし。

-周りを見えるようにするということなんですかね。

そうですね、コントロールかなぁ。出さなきゃいけない場面、出しちゃいけない場面。止まらなければいけないときが、これからも起こると思うから、その時に勇気を出して止まれるように。おまえ大丈夫かほんとに、誰も傷つけてないかって。

-感情に支配されるのではなくて感情をコントロールする。

風刺をして、それが喜劇で終わればいいけど、誰かの悲劇になっちゃだめじゃん。レベルアップするならそこかな。でも、いい子ちゃんではいたくないよね。

-いたくないんですね笑

傷つけたくはないんだけど、いい子ちゃんではいたくない。

-平和を望んでいる感じはしますね。

まあね、それはあるね。だってジブリを見て育ったんだもの。

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