HEROS

2019.1.8
no.20
山内 健嗣
Yamauchi Takeshi
古家具と雑貨「月日工作舎」店主

プロフィール


山内 健嗣
Yamauchi Takeshi

古家具と雑貨「月日工作舎」店主

宮城県仙台市生まれ。古道具や古材など、あらゆるモノを利用して家具や雑貨を制作する工作人。イベント装飾やオーダー家具雑貨製作なども展開しながら、街と人とモノの心地いい循環を作り出している。


今まで感じてきた時間とか場面を、自分色にして作っていけたらいいかも


 

なぜ、山内さんは活動の場所として石巻を?

石巻は一言でいうと震災があったからで。本当はサラリーマンだった時に転職自体は震災前から考えてて。で、いよいよ転職準備に取りかかろうかって時に震災が来て。大義みたいなのはなかったけど、そういうことが起こったまちで自分が好きなように楽しく暮らしていれば、若い人たちにも多少の希望や、こんなんでも生きていけるんだみたいなって感じに思ってもらえればいいっていう感じで、石巻でやってみようかなって。

こんなんで生きていけるんだっていうのは、なぜ思わせたいのですか。

大義のもとに社会的意義のあるプロジェクトを進めるのは、カッコいいんだけど、別世界の話みたいに感じちゃうかなっていう。そっちはそっちでかっこよくて素晴らしいことなんだけど、俺にはちょっと難しいかなって。そういう性分でもないかなっていう。もっと身近にフラっと遊びに来れる面白いお店をやっていけたらいいなって。敷居を上げたくないというか。

そう思うようになったのは、こういうところが好きというのがあるからですか?

そうだね。会社員時代に知り合いがやってる飲み屋とかにちょっと寄って、だべって、そういう時間が心地よくて。なんてことない時間が好きで、肩ひじ張らない感じで、誰でも受け入れられるようなお店をやっていけたらいいなっていうっていうところはあるかな。

前の会社ではちょっと違ったっていうのがあった。

前の会社はほんとに違う職種だったし、仕事自体は正直好きでもなかったかなって。いかに仕事以外の時間を充実させるかっていう。オフの時間帯。平日の夜とかでもそうだし土日はもちろん。

それでは、オンの時間を自分が目指していた時間にしようとしている。

そうかも。オフのときに感じた心地よさみたいなものを、自分が逆の立場になって、提供できたら楽しいだろうなって。

インプットしたものをアウトプットする。心地よいサイクルを作り出していくようになってきている。山内さんにとって循環っていうのは大切だったりする。

そう言われるとそうかもしれない。自分が今まで感じてきた時間とか場面を、自分色にして作っていけたらいいかもって思う。


下手は下手なりのやり方があるというか


 

実際に仕事でアウトプットするようになって見えてくることってなにかありますか。

そうだね、まあ意外とやってみれば来てくれる人がいるもんだなって。この辺だと変わった店だけど、意外と地元の人もフラっと入ってきてくれたり、ほんとはもっと敬遠されるかなっと思ってたんだけど。怪しい、入りづらい店だ、なんだアップサイクルって。

受け入れてくれた感じがある。

うん。その分、お店としては心地よさとか物自体を面白いと思ってもらえるものを作ってね、楽しんでもらったり、そういうことをこれからもっとやっていきたいかなって。

興味深かったのが、他のお店の方が山内さんに仕事を依頼して、店舗の一部を作ったり直したりされてましたよね。お店とまちの関係性のサイクルに繋がってるのかなって感じたんですよね。

そうですね。意外と付き合いはこう見えて広いっていう。頼まれて作ったものはSNSに意図して上げてなかったんだけど、表に出てこない仕事だから、あまり見えないかもしれないんですけど。

ざっくりですけど、何件ぐらい作ってきましたか。

そうね。3年前に始めてから数えると、100件弱はやってるかな、大小合わせて。

100件弱やってくるとそれまでと違う発見ってあるんですか?

反響が多かったのが手書きで書く看板。筆で文字書いたりとか、いわゆるサインペイントってやつを自分でこれからやりたいなっていう。好きでやろうとしてたことが求められるようになってきて、いい流れというか、ありがたいかなって。

ヒーローに必殺技を聞いているのですが。山内さんにとってハンドというのが重要かなと。手で文字を書くことや、加工もそうですし。

必殺技。そうだな。あり合わせのもので組み合わせる力というか。家具職人としては特に修行も積んでないし、看板も俺よりうまく書ける人なんていくらでもいるけど。それを組み合わせて両方できる人ってそんなにいないだろうと。技術の組み合わせというか。

技術の組み合わせ。

うん。下手は下手なりのやり方があるというか、組み合わせでカバーするというか。もちろん上手になろうとはしてるんだけど。自分の持っている技術でいいもの作ろうってなると、技術を寄せ合わせて、組み合わせて作ると総合的にプロに追いつけるところまでいけるかなっていう感覚。

ブリキっていうか工作っぽい感じがしますよね。必殺技としての工作。

そうだね。工作、そうだね。


感覚が人とズレてるところがあると思うから


 

そんな山内さんを一言で言うとどういう存在だと思いますか。

一言でどういう存在。ちょっとズレるけど、今、別バージョンの店ロゴを考えてて。月と太陽モチーフの。地球からみた月の裏側を見てるようなイメージにしてて。月の裏って地球から見えない。地球も回っているけど月も回っているので、月が同じ面を向いてるように見えて。そういうなんか見えない部分を見るっていう、隠れてる秘密じゃないけど魅力みたいなものだし、ガラクタでも、見落としてるような、見えない、カッコいい部分を見つけて生かしたり、組み合わせることで、そういうのを大事にしたいなって。

秘密を発見する人みたいな。

人が見えない角度から見るっていう。そういうことをしていきたいなっていう。

観測者みたいな、天体観測してる。

よく観察するかな、ものを。

なんか似合いますね、観察。

モノの名前を忘れて考えるみたいな。コップといわれるとコップにしかみえないけど、ペン立てって言われたらペン立てだ、みたいな。そういう概念に囚われないで、フラットな視点でモノを見て、かっこよく使えるかどうかっていうのを観察して作るみたいな。

エジソンを思い出しましたね。観察したり、実験したり。その中で、難しい部分もあったりとかやってる内に悩ましい部分はあったりしますか?

そうだね。こっちとしては、これいいじゃんっていうものができたけど、ある人から見たら、前のままでよかったんじゃないっていう。それ、何もしなくても良かったんじゃないっていう。価値観の違いを気にしてたら何もできないっていうのはあるけど、言われると、そういう見方もあるよねって。なんかこう葛藤っていうか新しい気付きみたいな。

自分としては色んな視点を試したい。たた視点の共有が難しい?

感覚が人とズレてるところがあると思うから。なんだろうな、出来合いのものをそのまま使いたくないっていうか。天邪鬼かな。普通にそのまま使えるんだけど、わざわざ自分好みに変えたりだとか。

ズレているっていう点でも天邪鬼でもあるし、ズレてなかったのだとしてもズラしに行くっていう。工作も既存のものをどんどんズラして別なものへと転化させたり、昇華していくわけですよね。逆にそういうのを良いって言ってくれる人もいるわけですよね。

そうですね。いる。


自分の生き方、スタイルだとか、それにお金がくっついてくるっていう感じ


 

石巻でやってるというのが面白いと思います。ズレって仲間外れとかそういうことにも使われたりするから、ズレることに関して恐れはないのかっていう。

全く恐れはないかと言われると恐れはあるよねやっぱり。好きなことをやってはいるけど、商売だからね一応。おとなしく売れるもの作っておけよっていう感じにはなるんですけど。でもやっぱり、それだったら自分じゃなくてもいいじゃんっていう感じだし、自分の生き方だから、スタイルだとか。それにお金がくっついてくるっていう感じだから、儲けようとしてやっている訳じゃないからね。結果、儲かるに越したことはないんだけど、それを目的にしちゃうと段々つまんないお店になっていくなって思いますね。

なるほど。そういう目的があって、自分のスタイルや生き方を大事にしていきたいと思うようになって、結果、転職もしている。

そうですね。

これから、このお店や、このお店がある石巻の街をこう作っていきたい、組み立てていきたいっていう考えはありますか?

うーん。そうだな。自分のやりたいことに素直にゴチャゴチャ考えずに取り組める、そういうことをやれている大人を、若い人たちに見せてあげるっていうのが大きいのかなって。こんな好き勝手やってるのに、正直儲けてもいなさそうなのに、これで生きていけるんだみたいな。やりたいことやってもいいんじゃないかって思えるように。世間は脅してくるけども、ニュースなんて暗いものばっかりだし、不安をあおるのがニュースだから。身近にそういう大人が居たら、少しでも気が楽になるんじゃないかなって。

そう言った意味で心地よい場所と時間を自分なりに作っていきたいと。

確かにそうかも。

人生を通してインプットしてきたものを、これから自分の店でアウトプットしていく、サイクルさせていきたいと。

そうだね。まとめていただいて有難いです。

ありがとうございます。

いえ、ありがとうございます。

 

月日工作舎
店主 山内 健嗣

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