HEROS

2019.3.23
no.29
矢口龍太
Yaguchi Ryuta
地域に表現文化の場を作り続ける変人オーガナイザー

プロフィール


矢口龍太
Yaguchi Ryuta

地域に表現文化の場を作り続ける変人オーガナイザー

石巻出身石巻在住/早稲田大学第二文学部卒/「R」主宰/いしのまき演劇祭実行委員長/ISHINOMAKI2.0 まちのコンシェルジュ/ラジオ石巻『劇場キネマティカ』MC/ロマンチック文化人類学部


表現文化は、誰かや何かとまた会うためのものだって思ったんですよね。


 

これまでの活動について教えてください。

石巻を中心に音楽や演劇、アートの場を作る企画「R」を主催しています。震災直後、文化や芸術はなんの役にも立たないと思ったんですね。東京で演劇の活動をしていたのですが、その稽古中に震災が起こって。その後も稽古をする日々でした。ある日、休憩時間にコンビニ弁当を食ってて、「俺、何やってんだろう」と思って。石巻にいる甥っ子はまだ小さいのに、ご飯を少ししか食べることができなかった。自分はコンビニ弁当を食って、金にもならない稽古をやって。その体験がきっかけですね。

その体験が、石巻で「R」をやろうと思ったきっかけの一つということですか。

そう、一番最初の原体験みたいな感じです。それから1年は、月に1回は地元に戻っていたんだけど、自分にできることは何もないなとずっと思ってました。だから帰る度にミュージシャンの友人を連れてきてました。音楽をやるわけじゃないけれど、手伝いに行きたいって話してくれていたので。東京のミュージシャンや劇団員は、石巻で何かをやりたいと思ってくれていたんですよね。

石巻で何かをやりたい。

2012年3月末くらいに母親がヨガイベントに参加したら、知り合いのおばあちゃんが来ていて、「外に出ないと鬱々としてしまうから」と話していたと。それを聞いた時に、こういう人が集まれる場を作らなきゃと思ったんです。石巻に来たいと話していた友人や地元のミュージシャンを5〜6組集めたのが「R」の始まりです。

東京界隈には、石巻に行きたいと思っている人たちが居る。石巻では、少しでも家を出るきっかけが欲しいという人たちが居た。矢口さんはそれをつなごうと思ったんですね。

そうですね。つなぎたいと思いました。ただ、石巻はまだ衣食住がままならない状況だったので、そんな中で本当にやっていいものか悩みました。第1回を始める時はものすごく怖かった。ただ、「10年間やります」と約束しました。「1回だけやります」というのは、自分の中で無責任だと思って。

10年間。

はい。そこで、どういうタイトルにしようかとても迷っていて。ヒントを探すために英和辞書を見ていたら、Rから始まるページに目が止まって。repeat、remember、residence、resistance、rhythme、rock、reggae。当時の心境や現状と重なる単語がとても多くて。なので、「R」にしました。第1回は30人くらいのイベントでしたけれど、出演した人、お客さん、関わった人、皆が「ありがとう」と言い合っている奇跡的な空間になっていました。これから「R」を続けていっても、今日はずっと越えられないのではないかな、と思うくらいに素敵な雰囲気でした。人の集いの理想形としてずっと目指している、原始人が集まる焚火みたいな感じでした。

原始人の焚火に近かったと。お客さんの年齢層がとても幅広いのが印象的でした。なぜ、このような場になっていったんだろうと。

誰でも来て欲しかったんです。当時はまた会えるのが本当に奇跡だと思い知らされたので。東京でのイベントではそこまで考えられないというか。表現文化は、誰かや何かとまた会うためのものだって思ったんですよね。「また会えたら」を、ずっと続けていこうと。


規模は小さくても続けていれば、地域でも文化が生まれたりするんじゃないか。


 

なるほど。「石巻にもっと<Culture>を」というコンセプトはその後に決めていったのですか?

コンセプトはずっと前から頭にありました。自分がまだ若い頃、石巻が本当に楽しくて。そんな記憶を持ったまま離れたから、いつか石巻に戻ってきてなにかやりたいなと思っていて。

記憶を持ったまま離れた。

そうですね。楽しい記憶。「石巻ってつまんない」と言って離れる人も多いかもしれないけども。

矢口さんはそうじゃない。

はい。僕は姉がいるのですが、その姉の世代の人たちが面白くて。それを見ながら育ったこともあって、石巻は面白いなと。いずれは戻ってきたいと思っていたところに、震災が起きたんですよね。

震災後に石巻に帰って来て、当時の楽しかった場所が少なくなっていたことに気づいた。

実は震災前から少なくなりつつありました。ライブできる場所や、演劇イベントなんて更に少ない。なので、ライブや演劇をやりたい人たちを東京から連れてきて、場をどんどん作りたいと思って。規模は小さくても続けていれば、地域でも文化が生まれたりするんじゃないか。少しは変わっていくんじゃないかと思いました。石巻にもっとカルチャーを、って。

矢口さんが今後作っていきたい未来でもありますよね。

そうですね。「R」をやっていて楽しいのは勿論なんですが、いずれは街を歩いていて、「今日はここで演劇やるんだ」「明日はあそこでライブやってるんだ」という状態になったら良いなと。それが自分が一番住みやすい環境だと思うので。その為にもやっているような気がします。

確かに自分の為かもしれないですが、そういったものを欲している人たちや、活躍の場が欲しい人からすれば嬉しいですよね。

当時よりは音楽ライブや演劇イベントを主宰する人も増えてきています。だから「R」の今の形を壊していこうと思ってます。ダンスや、写真、詩など、ニッチな分野を攻めたいなと。今年の秋以降は、R18指定をやっていこうかなと。「R」 もちょうど18回目なので。そうしたらタイミング良く、セクシーダンスで日本一を取った人と知り合いまして。他にも三味線をやりたいっていう人も居て。その2人がセクシーダンスと三味線でコラボしましょうという話になった。どこでできますかねとなった時に、石巻じゃないですかと言われて。やりましょうよと。


真面目にやってきたからこそ、やっとサブカルの入り口にたどり着けた。


今、イメージが湧いたのですが、矢口さんはサーカスの劇団長みたいですね。場を作ってお客さんを呼び込むクラウン的な。皆が笑うところや、感動するところを見たい。石巻の色んなところで劇場空間を作り上げる。

東京で色んなキワモノと知り合って、まだまだ連れてきたい人も沢山居るんですが、今ではないなと。そろそろかな、というヤバい人たちは居ますけれどね。

なるほど。もし、矢口さんの技を挙げるとしたら、なんでしょう。

技だと、壊すだと思います。一個前の自分を壊すみたいな。これまでの「R」はいわゆるちゃんとした演劇が多かったですが、これからはドロドロしている、エグイ要素も入れていきたい。それを楽しんでもらう為に、まず、王道の演劇を知ってもらわないといけない。文化を、カルチャーを、と言っていますが、サブカルも好きですし、サブカルを楽しむ為にはメインカルチャーがないと、という感じなんですよね。だから何かをやろうとしたら、次は同じのではなくて、それを裏切るものをやりたい感じなんですよね。びっくりさせたい。どっきりカメラとか、驚かすのとか、サプライズが好きなので。

びっくり箱のようですね。

それもいいですね。

びっくり箱なヒーローだとして、技としては驚かすという感じになるんでしょうか。

そうだね。驚かしたり、ドキドキさせたり、空想してもらったり、そういうのが好きだね。スリルが好きだから。

矢口さんは石巻というびっくり箱を作ろうとしているように思えます。石巻のまちなかを歩いている人が、ドキドキしたり、びっくりしたり。矢口さんはびっくり箱の中に住みたいんじゃないかと。

そういう気持ち、すごくあります。

今の話を踏まえて、今後ヒーローとして未来をこういう風にしていきたいという考えはありますか。

石巻で、演劇や音楽を作る人が増えること。「R」はその為にやっているところもあって。なので必ず毎回チラシも作ります。チラシを作って、宣伝して、それを見た子供がいつの間にか真似をすれば良いなと思っていて。公民館を正式に借りてイベントを開く、みたいな。それで真似する人が増えたら、今度はそれと真逆の変なことをやって、かき回すみたいな。めんどくさい奴、変な人でいたい。

変ということは、常に変わるとも言えますね。変態していきたい。そのように動くことは、石巻の街の魅力にもなりうる部分なのかなと。次にまた来た時には何か新しい発見があるかもしれないという期待。

成り行きでいしのまき演劇祭の実行委員長になったんですけれど、今年で実行委員長やめようと思ってまして。任せられる人が出てきたから、自分はふざけられるなと。これが一番やりたいことです。本当はこういう人間です。「R」を始めてから7年、真面目にやってきたからこそ、やっとサブカルの入り口にたどり着けた感じですね。

開催から7年、真面目な場や、カルチャー、ムーブメントを作ってきてやっと、

少し本性を出し始めたというか。

文化をかき混ぜる時期に来たという感じなんですね。びっくり箱が、今後どんな風になっていくのか、とても楽しみだなと思います。R18は個人的に興味ありますね。

エロスがテーマですよ。楽しみにしていてください。

OTHER HEROS