HEROS

2020.3.27
no.37
石渡 賢大
Ishiwatari Kenta
車を寄付することで生まれる
助け合いの文化

石渡 賢大
Ishiwatari Kenta

車を寄付することで生まれる助け合いの文化

1990年生まれ/千葉県出身/B型みずがめ座/慶應義塾大学/文学部/人文社会学科卒
一般社団法人日本カーシェアリング協会勤務


車を使ってコミュニティを作るというプロジェクトに興味が湧いた


 

石渡) 地域おこし協力隊第1号として石巻に移住してきました、石渡賢大と申します。現在は、一般社団法人日本カーシェアリング協会で働いています。

– なぜ、地域おこし協力隊に参加しようと思われたのですか。

石渡) 2015年くらいからカーシェアリング協会にボランティアとして関わっていて、その時からとても良い取り組みだなと思っていました。カーシェアリングの活動にもっと関わりたいなと感じて、転職することを決めました。

– 以前のお仕事はどのような内容だったのですか。

石渡) 損害保険の会社でした。交通事故の支払い業務をしていたのですが、交通事故は本当に悲惨だなと感じることがとても多くありました。ですので、交通事故を減らす活動をしたいなと思っていました。カーシェアリング協会の取り組みのひとつに、車を使ってコミュニティを作るというプロジェクトがあります。それは高齢者の事故防止に繋がるなと感じて、興味が湧きました。


車を寄付するという選択が当たり前な社会を


 

– 現在は主にどのようなプロジェクトを?

石渡) 寄付や支援を集める仕事をメインにしています。ファンドレイジングという内容です。コミュニティが継続して活動できるような基盤作りですね。私たちが集めている支援というのはいくつかあります。まず、金銭的な支援と、もう一つは車です。車を寄付で集めているところが私たちの大きな特徴です。9年間で、のべ450台程集まっています。

– 車を寄付するというのは、とても珍しいように思います。

石渡) そうですね。車を手放そうとなった時に、ひとつの選択肢としては、車を売るということですよね。または、知り合いに譲る。それができないとなった時に、車業者に処分をお願いする。この三つくらいしか選択肢がないと思います。私たちがしているのは、その車を社会のために寄付をするということです。困っている誰かのために寄付をするという選択肢を、当たり前にしたいんです。年間で350万台が廃車になっています。その0.1%でも私たちを経由して、社会に回っていくようになれば、車がなくて困っている人を助けられるかもしれない。そんな仕組みを作っていきたいと思っています。


誰かの役に立ちたいという気持ちを無駄にしたくない


 

– 350万台が廃車。寄付された車の中にはやはり活用が難しいものもあるのでしょうか?

石渡) そうなんです。これまでは、寄付の申し出を断るケースというのもあったんです。使用できる状態の車でなければ、私たちも受け付けられませんでした。誰かの役に立ちたいという前向きな気持ちを、自分たちの事情でお断りするというのが、申し訳ないなと思っていました。そういう気持ちを無駄にしたくない、うまく活用できないだろうかと考えていた時に、車リサイクル業者とパートナーを組むようになったんです。

– 車リサイクル業者!どのようなリサイクルを?

石渡) ボロボロの車を現場で活用することは難しいですが、その人たちならば、車を素材として見てくれます。車のすごいところは、ほぼ全てがリサイクルされるところなんです。別の車のドアや、エンジンに変わったりするので、無駄にならないんですね。車はリサイクルされて、買い取ってもらったお金は自分たちの活動資金になる。それを、被災地支援や、地域のコミュニティを作る財源にしていく。ですので、どんな状態の車でも受け取れるようになりました。

– 車の寄付をしたいという想いが循環するようになってきたのですね。思い入れがあるものをただ捨てるのは、確かに抵抗があります。

石渡) はい。これはアイデアベースですが、車のお葬式と納骨プロジェクトはどうかなと考えているところです。愛◯と付くものって、意外と少ないんですよ。愛犬、愛車はありますけれど、愛テレビとは言わないですよね。車は、それだけ大きな存在なんだなと。なので、車をリサイクルする際に、パーツの一部が自分のところに戻ってきたら嬉しいんじゃないかなと。寄付したらそこで終わりではなく、ちゃんと証が残るように。


車がシェアされることで、世界は少しだけ優しくなる気がする


 

– 使用可能な車は主にどのように使われるのでしょうか?

石渡) 一番使用されるのは、災害の時ですね。災害によって車が使用できなくなったという方に、車を貸し出ししています。災害時ではなくても、車がなくて困っている人に届けるのが、私たちのやるべきことなのではないかと思っています。今後、私たちが取り組んでいきたいのは、経済的に苦しくて車が持てない、車がないから仕事ができないという、貧困のスパイラルから抜けることができない人への車の貸し出しです。

– 共通しているのは自立するまでの支援ですね。カーシェアリングさんの全体の動きとしても、自立していくというのは大きなテーマなのでしょうか。

石渡) そうなんです。支援だけで終わるのではなくて、車が使える状況が生まれることで、助け合う文化が生まれていったらいいなと思っています。車を使った人が、私も助けてもらったから、誰かのために何かしたいと思うようになるかもしれません。そうなっていくと、世界は少しだけ優しくなる気がするんですね。私は、それが寄付の力だと思っています。寄付をして困っている人を助ける、それが次の人の支援に繋がっていくという、想いの循環が作れたらいいですね。私はそれを、車で始めていけたらと思っています。

OTHER HEROS