HEROS

2021.2.25
no.48
富松 篤
Atsushi Tomatsu
浜の人々とともに生きる
彫刻家

富松 篤
Tomatsu Atsushi

浜の人々とともに生きる彫刻家

1985年生まれ/和歌山県和歌山市
石巻のキワマリ荘 代表 / 彫刻家


アーティストとして東北に行く必要があるんじゃないか


牡鹿半島の狐崎浜で暮らしながら、彫刻家として作品制作をしています。また、「石巻のキワマリ荘」という現代アートスペースの活動をしています。

– いつから石巻で活動を始めたのですか?

正式には2016年です。2013年から東京と石巻を行ったり来たりしていました。そもそも、東京での活動にあまりこだわりを持っていなくて。震災後、日本が大きく変わろうとしている時に、アーティストとして東北に行く必要があるんじゃないかと悶々としていました。直後は、アートフェアの参加や個展があったりと自分のことで忙しかったので、すぐには行動に移せませんでしたが。

– 石巻、そして、浜に移住しようと決めた理由はなんですか?

ここに新たな可能性があると思いました。それに、 牡鹿半島の景色や、ここに住んでいる人たちが素敵だったので。浜の暮らしを本で読んだり、テレビで見たことはありましたが、実際に目の当たりにして感動しました。自然と向き合いながら暮らしている人たちがいるこの浜で、自分も制作場所を持ちたいなと。


アートに触れる機会がほとんどない半島での作品制作


– 浜の暮らしを始めた後、作品制作や、作品に対する反応に変化はありましたか?

これまでの作品制作は、丸太から彫刻を進めていくカービングという手法だったのですが、牡鹿半島に来て新しい素材を発見しました。それが流木だったんですよ。半島の人にとって流木はよく見かけるもので、薪の代わりとして燃料にしています。その流木が、手を加えることによって作品として昇華される、そういった部分に驚いてもらいましたね。モチーフである鹿も身近な存在なので、アートの入り口として入りやすかったと思います。

– 「現代アートってなに?」という状態から、「あ、鹿!」「流木だ!」という状態に。

そうですね。半島は、市街地に比べてもアートに触れる機会がほとんどない環境です。そこに、作品を作る人が入ってきた。自分の存在に対しての驚きがあったと思います。最初は「何をやっているのか分からない」という感じでした。ただ、移住して4年が経って、少しずつ受け入れられてきました。作品を理解する、というよりかは、「見ていて面白いよね」という反応がありますね。


小さなコミュニティの中で暮らすことで明確になった自分の役割


– 作品制作以外に、漁業のお仕事もされていますよね?

その土地の仕事をすることが重要だなと思っています。 暮らすということは、その土地を知ることでもあるので。それこそ、浜には人それぞれ役割があります。昔は郵便屋があって、下駄屋があって、豆腐を作ってる家があったり。まるで、RPGに出てくる村みたいに、ひとつのコミュニティがしっかり形成されているというのを改めて感じました。ここで暮らしてきたことで、自分の役割が前よりも明確になりました。生きる上で欠かせない衣食住以外の、文化的なことを担う。それが僕の役割なんだと思いましたね。

– 役割がはっきりしている環境に身を置くことで、自身の役割も明確になっていった。

はい。むしろ、そうでなければ浜の人は受け入れてくれなかったでしょうね。「いまだに何をやっているか分からない人」みたいな感じで。何者かであることに対して、きちんとした説明ができることが大事です。大きな街にいると何者にでもなれるじゃないですか。だけど、浜という小さなコミュニティの中では、「これに関してはあの人」「あの人に頼めばなんとかなる」という会話が今もあって。ひとつの事に長けている人は、やっぱり強いなと改めて感じました。


地方でアートを求めている人たちの道標になるために


– 浜での暮らしをされているわけですが、石巻の街に関してはどのように感じていますか?

みんなやっていることがバラバラなのに、いざという時のまとまり感がすごいなと思っています。ジャンルは違うのに、テーマが決まったら一緒に集まって真剣に考える。すごい面白いなって思いますね。

– 石巻のキワマリ荘も、ジャンルがバラバラな作家が集まって活動していますよね。活動する上で意識されていることはありますか?

石巻のキワマリ荘は、作品発表の場だけではなくて、誰かに会えたり、仲間が増える場所。一人で抱え込んで悶々としてる作家たちが、何かを吐き出せる場所でありたいですね。また、石巻で初めて生まれた現代アートのギャラリーなので、ひとつの道標になればいいなと思っています。

– 石巻という地方の街の、現代アートの道標。

はい。そのためにも、この場所で発表する意味を、もっと明確にしていく必要があります。作家が漠然と展示しただけで終わってしまうのはもったいない。展示した作家がギャラリー側に搾取されて終わってしまった、ということがあるんですよね。これでは作家は育たないですし、この場所はそうならないようにしていきたいです。

– ギャラリーにとっても、作家にとっても意味がある場所。訪れる方の反応はどうですか?

アートを求めている人が多いという印象がありましたね。アートから伝わるものに飢えているというか。「アーティストに会えて話ができるのが楽しい!」「遠くに行かないと見れないものが、ここで見れるんだ!」という反応もありました。今では、ネットやSNSでも作品を見ることはできますが、体感する機会は少ないですよね。だからこそ、街中にあるこのギャラリーを、刺激的な場所にしていけたらと思います。

 

石巻のキワマリ荘
HP : https://ishinomakinokiwama.wixsite.com/ishinomaki-kiwamari
twitter : https://twitter.com/isnmknkiwamari?s=20

富松 篤
HP : tomatsuatsushi.wixsite.com/home

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