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2019.4.4

アーティストたちが集うアートロードの話


石巻のキワマリ荘外観


こんにちは!NHI(next hero ishinomaki)編集部のマキです。

最近、石巻のまちなかで気になるムーブメントがあるんです。それはアート(芸術)です。大きな流れを生み出したのは、2017年の夏、51日間に渡って開催された「アート」「音楽」「食」を楽しむ総合フェスティバル「Reborn-Art festival 2017」。国内外のアーティストが参加し、ここでしか見られないアートを鑑賞するべく、全国から大勢の人が訪れました。


山形藝術界隈○六〔工藤玲那展〕@GALVANIZE gallery photo by ミシオ

 

その中で、参加アーティストの一人である有馬かおるさんが「GALVANIZE gallery 」を石巻の商店街で立ち上げます。芸術祭が終了後、同年12月から、この場所を改めて「石巻のキワマリ荘」と名乗り、新しいアートギャラリーとしてスタートさせました。現在、石巻のキワマリ荘の中には、GALVANIZE gallery を含めた4つのスペースが存在します。

 


山形藝術界隈展〇五@GALVANIZE gallery photo by ちばふみ枝


石巻は宮城県で二番目に大きい街ですが、美術館やアートギャラリーがありません。アート作品を発表したり、鑑賞する場所や機会がほとんどないという状況でした。石巻のキワマリ荘では、県外や石巻で活動するアーティストが定期的に展示活動を行い、石巻のまちなかに足を運ぶきっかけを新たに生み出しています。

石巻のキワマリ荘を立ち上げた有馬かおるさん(写真右)に詳しくお話を伺いました。


石巻のキワマリ荘代表引き継ぎ(写真左:富松篤  写真右:有馬かおる) photo by ミシオ

 

ーキワマリ荘とはどういう場所なのでしょうか?

有馬) キワマリ荘は全国に3つあります。地方でアートをやっている人がバラバラなのはもったいないので、一つの場所に集める。地方のアート出力装置であり、グループであり、場である、という感じです。


橋本照嵩写真展「石巻1960年代〜2000年代」@setten(石巻のキワマリ荘2F) photo by 古里裕美

 

有馬) キワマリ荘には、精神的な居場所を求めている人がたくさん来ます。実際に精神的に癒されて去っていった人もいます。これは自分の話ですが、精神を病んでいたから絵を描いた訳ではないんですよ。私は絵がもともと好きで、病んだ状態の時に絵を描いていただけで。その時、違うことをやっていたら、別の結果になっていたでしょうね。それは演劇であったのかもしれないし、スポーツであったのかもしれない。例えばスポーツだったら、フィットネスクラブとかで発散できるかもしれません。美術系の場合、そういう場所がないんですよね。


ちばふみ枝個展「serendipity」@GALVANIZE gallery photo byちばふみ枝

 

ーだからこそ、この石巻でも美術系の人たちの場所を作ろうと思ったということですか?

有馬) アートに興味がある人が集まれる場所を地域に作ることが大事だと思っています。作家たちが集まって話ができる場所かつ、これから生まれてくるであろう作家の卵たちが寄れる場所が欲しい。アートや美術に拠り所を持つ文化系の立場が狭い状況をなんとかしたい、というのがあります。


現石巻のキワマリ荘メンバー  photo by @ちばふみ枝

 

ーこれまでもそうですが、最終的には有馬さんは各地のキワマリ荘から離脱していますよね。その理由は?

有馬) 自分がリーダーのポジションから抜けることで、その街でしかできないような空気になっていくと思うんですよね。この街の人たちがしたかったことが、ようやく作れるようになる。それまでに展示や制作のノウハウを教えます。その人たちが本当にやりたいことは、私には伝えられない。ただ、やりたいと思ったことをできる状況を作る。それが重要なんです。この街に居づらいという状況を作らないということですかね。

現在、有馬さんは石巻のキワマリ荘の代表を離れ、新しいギャラリーの立ち上げ準備をしています。その名も「アートドラッグセンター」。場所は石巻のキワマリ荘の通り沿いにある「守長商店」。店舗の空きスペースを活用してギャラリーにするとのこと。企画の共同代表は守長商店の三代目店主である守 雅章(もり まさあき)さん。美術系の学校を卒業後、双子の弟とアートユニット「守章(もりあきら)」を結成し、東京を中心に制作活動をしていました。

アートドラッグセンター改装前のスペースで守さんにお話を伺いました。


守長商店2Fのスペース

 

ー有馬さんとの最初の出会いはどのような感じだったのですか?

守) 昨年、石巻で開催された石巻演劇祭のチケット販売場所がキワマリ荘だったんですよ。チケットを買いに行ったら、有馬さんが「はい」って出てきて。話していたら、「僕、こういうの描いてるんです」って作品をガーっと出してきて。世の中にはこんなに上手い人がいるんだなとびっくりしちゃって。そこから、なぜ石巻にいるのかを聞いたら、「石巻を好きになっちゃったから、石巻に住民票を移したんだ」と言っていて。滞在展示活動をしたアーティストが、住民票を移してその後も住み続けているのに本当に驚いたんですよ。その話の流れで、「うちのお店(守長商店)の二階が元保険屋さんで、今は空き部屋になっているんですけども、見に行きますか」と話して、その日のうちに見に行くことになりました。


ーそもそも、なぜギャラリーを始めようと思ったのですか?

守) 僕の子供は大学を出て仙台を中心に音楽活動をしているんですが、石巻に帰ってくると腕が鈍るっていうんですよ。仙台は選べるぐらい練習場所があるし、レコーディングもできる。石巻に戻って練習はしないよねって。そうすると、ライブも石巻でやらなくなりますよね。表現しようとしてる若者に対して、この町は何も考えていないなと前から思っていたんですけど、最近は本当にそう感じるようになってきて。これはなんとかせにゃいかんなと思っていたんです。それは美術分野に関してもそうだなって。

ーアートドラッグセンターという名前の由来は?

守) ギャラリーの名前は早い段階で決まりましたね。有馬さんが石巻のレンタルビデオ屋さんに行った時に、「ツレがうつになりまして」というDVDがいつも全部借りられていたらしく、「石巻ってそういう部分があるんだな」と話を聞いていて思いました。東日本大震災以降、建物や道路はどんどん新しくなってきてるけども、見えない部分で病んでいる。そもそもアートドラッグセンターは、有馬さんが犬山のキワマリ荘内で管理運営していたギャラリー名ですが、コンセプトの「アートは人の心を治療する薬である。」という表現が、石巻の今の状況とすごく合っているなって。

ーギャラリーはどういう風にしていこうと思っていますか?

守) 「地元に住んでいる高校生や若い人たちが、自主的に発表できる場所にしていきたい」と有馬さんと話しています。僕は石巻を一度出て、東京で働きながらアート活動をしていたんですね。ギャラリーで展示することもありました。そこで感じたのは、いいギャラリーは画廊主の考えがはっきりしている。ただ、石巻でそれをそのままやろうとは全然考えていなくて。若い人が自分たちで考えて、自分たちで展示するということを実践する場所として、この通りを活かしていきたいですね。それに、一本の通りでいろんな作品を見ることができるのはすごく興味深いなと思っています。仙台にはギャラリーや美術館はありますけど、距離がそれぞれ離れているので。

「アートドラッグセンター」は今年の8月に開催される「Reborn-Art festival 2019」に合わせてグランドオープンとのこと。石巻のまちなかに、一本のアートロードが生まれようとしています。そして、若き才能たちが集まり、創造の芽を伸ばし始めています。震災で大きな傷を負った石巻という街に、これからどのようなアートが生まれるのか、目が離せません。

以上、NHI編集部マキによる、まちなかレポートでした!

石巻のキワマリ荘
https://twitter.com/isnmknkiwamari

 

(参考)ART DRUG CENTER(犬山)

◯ お話を聞いた方

有馬かおる(1969年、愛知県出身、石巻市在住)

ドローイングを中心にペインティング、彫刻などを制作。キワマリ荘プロジェクトを行なっている。2018年「To see」Queer Thoughts, New York(個展)2017年「Reborn-Art Festival 2017」石巻市(グループ展)2015年「Face of a human」MISAKO & ROSEN 東京(個展)「Rainbow」Queer Thoughts、ニカラグア(グループ展)、2013年「ナウ・ジャパン」クンスト・ハーレ・アーメルスフォート、KADE、オランダ(グループ展)2007年「夏への扉 マイクロポップの時代」水戸芸術館現代美術ギャラリー、水戸、茨城(グループ展)2004年「第54回 カーネギーインターナショナル」カーネギー美術館、ピッツバーグ(グループ展)

https://twitter.com/Galvanize2017

守 章 Akira Mori

1967年、宮城県石巻市生まれ。石巻・東京に在住。1996 年、双子の兄弟ユニットとしての活動を開始。守章は、「私」と「他者」を結び、遠ざける各種メディアが生む「距離感」、集団や自治体などの区分けに存在する見えない「境界」を視聴覚化する制作を行っている。守の作品は、「VIDEONALE 7」(ボン市立美術館・ドイツ)、MOTアニュアル2000「低温火傷」展(東京都現代美術館・東京)、「そらいろユートピア展」(十和田市現代美術館・青森)、「MOTサテライト 2017秋 むすぶ風景」展(清澄白河周辺/東京都現代美術館主宰・東京)、Path-Artの仲間たち 富田俊明×守章「リップ・ヴァン・ウィンクルからの手紙」展(釧路市立美術館・北海道)などで展示されている。

http://akiramori.net/


今回の記事に関わるヒーロー


ミシオ
ギャラリーで生活する美術家
京都生まれ石巻在住。
生活・制作・展覧会・作品販売・イベントなどの運営を行うオルタナティブ・スペース「おやすみ帝国」代表。

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